COVID-19肺炎患者の炎症と栄養代謝動態の特徴に関する検討 /苛原 隆之 論文紹介

苛原 隆之医師
学歴横浜市立大学医学部医学科(2003年)
日本医科大学大学院医学研究科(2017年)
略歴
(主な勤務先)
日本赤十字社医療センター外科(2003年5月~2008年3月)
日本医科大学救急医学教室(含関連病院)(2008年4月~2013年3月)
川口市立医療センター救命救急センター(2017年4月~2019年6月)
主な学会活動日本救急医学会
日本外科学会
日本静脈経腸栄養学会
主な研究課題侵襲時の栄養代謝動態の変化と治療的介入の可能性
大動脈閉塞バルーン(IABO/REBOA)の有効な活用法
災害時現場活動における救助医療連携

COVID-19による栄養代謝動態の変化

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、世界的なパンデミックを引き起こし、重症例では致死率も高い疾患である。

従来の敗血症とは異なる免疫応答や、独特な栄養代謝動態の変化が報告されている。

本研究では、これらの特徴を明らかにし、重症度に応じた治療的介入の可能性について考察することを目的とした。

COVID-19による栄養代謝動態の変化の研究対象と方法

2021年8月から2022年2月までに、愛知医科大学病院救急ICUに入室した、PCR検査陽性のCOVID-19肺炎患者28名を対象とした。

中等症18例と重症10例に分け、炎症反応指標・栄養指標・間接熱量測定を行い比較検討した。

また、重症例のうちw-ECMO施行例4例・非施行例6例についても比較を行った。

COVID-19による栄養代謝動態の変化の研究結果

COVID-19による炎症反応

重症例では中等症例に比べ、CRP・PCT・プレセプシンが有意に高値であり、リンパ球数が有意に低値であった。

IL-6は重症例で高値傾向を示したが、統計学的有意差は認められなかった。

COVID-19と栄養指標

重症例では中等症例に比べても、CONUTスコアが有意に高値であり、プレアルブミンは低い傾向を示した。

PGC-1αは重症例で有意に高値であった一方、L-カルニチンは両群間で差はなかった。

COVID-19と間接熱量測定

COVID-19肺炎患者は通常肺炎患者に比べて、エネルギー消費量、RQが高い傾向を示した。

糖質酸化量は両群間で差はなかったが、脂質酸化量はCOVID-19肺炎患者で低い傾向を示した。

COVID-19とw-ECMO施行例の比較

w-ECMO施行例は非施行例に比べ、年齢が有意に若年であった。

リンパ球数はw-ECMO施行例で低い傾向、PCTはむしろ低い傾向であり、プレアルブミンは保たれる傾向を示した。

COVID-19肺炎の炎症と栄養代謝動態の考察

本研究では、COVID-19肺炎は重症度に応じて高度炎症および免疫麻痺状態に陥り、脂質代謝が亢進し、糖質代謝も活発であることが示唆された。

従来の敗血症とは異なり、IL-6は比較的低値であり肺内血管の微小血栓が肺障害の一因と考えられる。

COVID-19肺炎の炎症と栄養代謝動態に対する治療的介入の可能性

血液浄化法・抗炎症薬・免疫療法・栄養療法など、重症度に応じた治療的介入が有効である可能性がある。

COVID-19肺炎は重症度に応じて高度炎症および免疫麻痺状態・脂質代謝亢進・糖質代謝活発化などの特徴的な炎症と栄養代謝動態の変化が起こる。

これらの変化を踏まえ、栄養学的リスクを踏まえた上での治療や栄養療法に効果があることが期待される。

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