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【経歴】
現在……………神戸市立医療センター中央市民病院臨床検査技術部技師長
COVID-19罹患後の肺機能障害の概要と影響分析
COVID-19の感染は、肺組織に重大な影響を及ぼすことが知られています。
感染の重症度に応じて、肺機能にもさまざまな影響が現れており、重症COVID-19患者は、90パーセントに肺機能の低下が認められています。
重症患者の%DLco(肺拡散能)は退院後3ヶ月で平均76.9%まで低下し、一部の患者では12ヶ月経過しても正常値に戻らないことがあります。
入院期間も肺機能への影響が大きく、研究では、入院期間が有意に長かった患者の中で、退院後1年で肺拡散能が80%未満に低下しているケースが多く見られました。
COVID-19による肺機能低下の具体的数値分析
%DLco(肺拡散能)は重要な指標であり、この値が低下すると、肺のガス交換能力が損なわれていることを示します。
研究によると、COVID-19を重症で経験した患者の中には、退院後12ヶ月で%DLcoが正常範囲の80%未満に留まるケースが報告されています。
そのため、COVID-19に肺の永続的な機能障害や線維化が起こることが示唆されています。
退院後の経過観察では、肺機能の低下が持続する患者群では、特に肺拡散能の回復が遅いことが分かっています。
具体的には、重症COVID-19患者の中で、%DLcoの値が退院後3ヶ月で70%以下に低下し、12ヶ月経過しても80%を超える回復を見せない患者が多数観察されており、COVID-19による肺損傷が長期にわたって影響を及ぼし続けることがわかります。
COVID-19の肺への影響メカニズムとその結果
COVID-19が肺に与える影響は、直接的なウイルス感染だけでなく、炎症反応や免疫系の過剰反応によっても引き起こされます。
新型コロナウイルスは肺胞の細胞、特にII型肺胞上皮細胞を標的とし、これが炎症と組織損傷を引き起こします。
病理学的には、重症COVID-19患者ではびまん性肺胞損傷(DAD)が一般的で、これは肺の線維化と長期的な機能低下を引き起こすことが多いです。
COVID-19が引き起こす肺損傷のメカニズムとして、ARDSに伴うびまん性肺胞機能障害(DAD)・肺胞微小血管の閉塞・炎症性サイトカインの関与が認められています。
新型コロナウイルスは肺胞II型細胞に直接攻撃を加え、肺組織のダメージを促進します。
この結果、肺の血管内皮細胞や血小板が活性化し、血栓形成を引き起こすことが示されています。
研究では、重症感染を経験した患者の中で、肺機能指標が顕著に低下し、その低下が長期間持続することがわかり、DLcoが退院後も80%未満に留まる患者は、DADの結果として長期的な肺線維化を示す可能性が高いです。
本検討の研究限界として、研究対象者のCOVID-19加療前の肺機能検査データがないことが挙げられるが、呼吸器疾患を含めた基礎疾患に有意差を認めなかったことより、得られた正常・低下群の差はCOVID-19によるものと考えられる。
また、6分間歩行試験などの運動機能評価・CT検査・心エコー図検査といった他の画像検査との比較については行えていない。
最後に,肺機能検査は検者手技や被検者の努力依存で結果に影響を及ぼす検査である。
しかし,当研究で使用された検査室では年1回の検者間差(同一被検者においてFVCの測定誤差が0.15L以内)を実施しているため、検者による結果の差異はほとんどないと考えている。
経時的変化による肺機能の長期観察
COVID-19感染後の肺機能は、時間の経過とともに変化します。
経時的変化としては、一部の患者では退院後も肺機能が完全には回復せず、特に肺拡散能が長期間にわたって低下していることが確認されています。
これらの患者では、退院後も呼吸困難や運動耐性の低下などの症状が継続しており、肺の線維化や慢性的な炎症が原因となっていると考えられます。
また、肺機能検査指標、特に%DLcoは長期的な肺機能を評価するための重要なツールであることがわかっています。
今後の展望としては、今後は6分間歩行試験などの運動機能評価やCT検査や心エコー図検査といった他の画像検査との比較や、入院加療を必要としなかった軽症や無症候の患者にも対象範囲を広げ検討を行うことが可能です。