若年者で新型コロナウイルス感染後に長引く症状の特徴/風間 逸郎 論文解説

医学博士 風間逸郎

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【経歴】
1998年4月 聖路加国際病院内科 研修医 (~2002年3月)
2006年4月 Harvard Medical School (Boston Children’s Hospital) 
        ポスドク(日本学術振興会海外特別研究員)(~2009年4月)
2009年5月 自治医科大学腎臓内科学部門 病院助教
2010年6月 東北大学大学院医学系研究科(細胞生理学分野) 助教
2016年5月 東北大学大学院医学系研究科(生体システム生理学分野) 准教授
2018年4月 宮城大学看護学群専門基礎領域(医学) 教授

【著書】
Annual Review腎臓, 中外医学社(2006年)分担
消化・吸収・排泄イラストレイテッド-病態生理とアセスメント. 第1版, 学研(2010年)分担
腎臓内科クリニカルスタンダード. 第1版(2016年)分担

【論文】
聖路加国際病院における最近6年間のカンジダ血症についての検討.日本感染症学雑誌(2003年, Corresponding author)
BSC1 inhibition complements effects of vasopressin V2 receptor antagonist on hyponatremia in SIADH rats. Kidney Int(2005年)
Podocyte-derived BMP7 is critical for nephron development. J Am Soc Nephrol (2008年)
Complete remission of human parvovirus B19 associated symptoms by loxoprofen in patients with atopic predispositions. Case Report Med (2012年, Corresponding author)
Voltage-dependent biphasic effects of chloroquine on delayed rectifier K+-channel currents in murine thymocytes. J Physiol Sci(2012年, Corresponding author)
Amphipaths differentially modulate membrane surface deformation in rat peritoneal mast cells during exocytosis. Cell Physiol Biochem (2013年, Corresponding author)
Benidipine suppresses in situ proliferation of leukocytes and slows the progression of renal fibrosis in rat kidneys with advanced chronic renal failure. Nephron Exp Nephrol (2014年, Corresponding author)
Physiological significance of delayed rectifier K+-channels (Kv1.3) expressed in T lymphocytes and their pathological significance in chronic kidney disease. J Physiol Sci (2015年, Corresponding author)
Olopatadine inhibits exocytosis in rat peritoneal mast cells by counteracting membrane surface deformation. Cell Physiol Biochem (2015年, Corresponding author)
Chlorpromazine-induced changes in membrane micro-architecture inhibit thrombopoiesis in rat megakaryocytes. Biochim Biophys Acta (2016年, Corresponding author)
Postrenal acute kidney injury in a patient with unilateral ureteral obstruction caused by urolithiasis: a case report. Medicine (2017年, Corresponding author)
Partial exposure of frog heart to high-potassium solution: an easily reproducible model mimicking ST segment changes. J Vet Med Sci (2018年, Corresponding author)
Apparent ST elevation in right bundle branch block pseudo-mimicking myocardial infarction. SAGE Open Med Case Rep (2019年, Corresponding author)
Second-generation Histamine H1 Receptor Antagonists Suppress Delayed Rectifier K+-Channel Currents in Murine Thymocytes. Biomed Res Int (2019年, Corresponding author)
Delayed Rectifier K+-Channel is a Novel Therapeutic Target for Interstitial Renal Fibrosis in Rats with Unilateral Ureteral Obstruction. Biomed Res Int (2019年, Corresponding author)

【所属学会】
日本内科学会(総合内科専門医),日本生理学会(評議員,生理学エデュケーター),日本腎臓学会(腎臓専門医,評議員),アメリカ腎臓学会(上級会員; FASN),日本医師会認定産業医

新型コロナウイルス感染後の長期症状の特徴と影響

新型コロナウイルス(COVID-19)に感染した日本人の中には、後遺症が数週間から数ヶ月にわたって持続するケースが報告されています。

特に注意が必要なのは、後遺症によるロングコビッド(感染から回復した後にも、後遺症としてさまざまな体調不良が続く)という状態です。

ロングコビッドに陥った患者は、

慢性的な疲労感
呼吸困難
胸部不快感
認知機能障害などの精神/神経症状(ブレインフォグ)

など多岐にわたる症状に苦しんでいます。

当論文では、検査キットまたはPCR検査により新型コロ ナウイルス陽性と判定された、重篤な基礎疾患を持たない18~28歳までの日本人150名(男性57名,女性93名)に対してwebアンケート調査を行った。

新型コロナウイルスとワクチン接種の関連

いずれかの症状が1ヶ月以上持続した人もそうでない人も、ワクチン接種回数や最後のワクチン接種時期から感染までの期間には大きな差がなかったことがわかりました。

しかし他の論文では、新型コロナワクチン接種が新型コロナ後遺症の発症を予防することが明らかになっています。

新型コロナウイルス症状の持続期間と重症度

COVID-19感染後に出現する症状は個人差が大きいものの、一部の人では症状が長引く傾向にあります。

調査結果では、感染者の約60%が高熱や喉の痛み、咳といった初期症状を経験しています。

発熱や咽頭痛は発症初期のみの症状に留まることが多いが、

咳・息切れや全身倦怠感、精神・神経症状は発症すると長期化する場合が多い。

また、新型コロナウイルスの特定の症状が1ヶ月以上持続した割合は16%ということが判明しました。

集中力の低下や抑うつ傾向といった精神神経系の症状を発症したほとんどの方は、症状が1カ月以上継続しています。

また、新型コロナウイルスがインフルエンザより重かったと回答した方は約4割、同等であると回答した方も5割であったため、インフルエンザよりも多くの場合で重症である。

新型コロナウイルス長期症状のリスクファクター

オミクロン変異株が主流となる第六波以降は高熱・咽頭痛などのインフルエンザ様症状で発症するケースが多いが、後遺症感染者(2ヶ月以上の症状の持続する感染者)の割合はあまり変化が見られていない。

しかし、多くの感染者が症状が2週間以上持続しており、特に若年者では感染後に長引く症状によって苦しむケースが多いということが判明した。

長期にわたるCOVID-19の症状は、ライフスタイルや既存の健康状態によっても影響を受けることが示唆されています。

特に、アレルギー性疾患を持つ人や不健康な食生活・運動不足の傾向がある人々は、症状の発生リスクが高いとされています。

調査では、アレルギー性疾患を持つ若年者は、長期症状を経験する確率が約2倍であり、運動習慣のない若年者も同様の傾向が見られました。

精神・神経症状が起こるのは、新型コロナウイルスの発症メカニズムとして、自己免疫反応・慢性炎症の関与が認められており、これらが脳内の神経細胞を傷つけることで精神・神経症状が起きるためであると示唆される。

アレルギー性疾患は、慢性炎症に関わる脂肪細胞が活性しやすいことを示唆している。

不健康な食生活・運動不足は、炎症によって傷つけられた神経細胞の修復を遅延させるため、精神・神経症状が起きやすいことを示唆している。

また、新型コロナウイルスの複数症状の同時発症は全身に炎症を起こしやすいことを示唆している。

以上の理由から、長期症状や精神・神経症状があった方にみられた傾向としては、「アレルギー性疾患を持つ・不健康な食生活・運動不足・新型コロナウイルスの複数症状の同時発症」の傾向が見られています。

新型コロナウイルス予防と管理のためのアプローチ

新型コロナウイルス感染症の長期症状に対する効果的な予防と管理戦略は、公衆衛生上の優先事項となっています。

健康的な食生活・定期的な運動といった健康習慣の促進は、COVID-19の長期症状を予防し、管理するための重要な要素です。

また、アレルギー疾患を持つ人は、症状の長期化や精神・神経疾患を発症するリスクが高いため、発症時に予測することが大切です。

日常生活で実践可能な新型コロナウイルスに対する予防策・対応策を行う手段を考えていくことが医療従事者にとっても大切な務めであると考えられる。

文献:若年者で新型コロナウイルス感染後に長引く症状の特徴

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